資産運用の中で初心者が最初に思いつくのがFXでしょう。残念ながら、初心者がこのFXに挑戦した場合、勝率については1割程度であると言われています。

勝率がこのように低い理由は、何と言ってもリスクをきちんと理解したり管理していなかったりすることにつきます。言い換えれば、リスクを理解・管理することでFXの勝率を上げることが可能です。

そこで、この記事では、初心者がFXで失敗しないように、FXに潜むリスクについて解説するとともに、それらとの向き合い方に焦点を当てて いきます。

FXとは?

FXとは?
FXとは、Foreign Exchange(外国為替)を略したものです。言い換えれば、自国が発行する通貨について、貿易等で他国と取り引きする際に困らないように、お互いの通貨の価値について定めておくことです。

FXそのものについて知ってもらうために、まずは基本的な事項について解説していきます。この基本をしっかりと抑えておくことで、FXとそれに伴うリスクの全容に対しての理解へと繋がることでしょう。

なぜ、交換比率は変動するのか?

貿易等で取り引きする国同士の間の経済力や国力等は、機微に変化します。そのような機微の変化を踏まえこれらの均衡を図れるようにすべく、各国の通貨に関しては需要量と供給量とが常に変化するのです。

その結果として、「需要と供給との関係」のとおり、それぞれの通貨ペア同士の価値も変化します。それ故に、交換比率については必然的に変動せざるを得ません。

FXにおけるリスク

FXにおけるリスク
FXは行う上でリスクについて予め把握しておくことが絶対条件です。

このリスクについては「FXトレーダー全般に共通するリスク」と「初心者特有のリスク」の2つが存在します。

この2つのリスクを正しく踏まえた上で、FXを行いましょう。

一般的なリスク(初心者に限らないもの)

まずは、FXトレーダー全般に共通するリスクについて解説します。

このリスクについては以下の5つが存在します。

  • レバレッジ
  • 金利の変動
  • 流動性の低下
  • スリッページ
  • 取引所等の機能不全

初心者の人はこの共通のリスクを踏まえることで、後述する「初心者特有のリスク」についても理解できるようになるでしょう。

レバレッジ

レバレッジ
FXは取り引きする通貨ペアの変動に対して、お金を賭けて利益を得ようとするものです。各国の経済政策は「安定」を第一に掲げているために、この変動というには株価等と比較して小さいというのが一般的です。

この変動率が小さいということは、リスクも小さい分、利益も小さくなることを意味します。そこで登場するのが「レバレッジ」というものです。

レバレッジとは、日本語で言えば「てこ」を意味し、リスクを増大させる分、得られる利益も増大させる効果も有しています。

このレバレッジについては、通常は倍率で表示され、国内の取引所では最大25倍程度(海外等では888倍)まで設定できるようになっています。つまり、利益を最大25倍に増大させることができるということです。

もちろんレバレッジを大きくすることは、その分リスクも大きいために、最悪の場合は「ロスカット」という現象により資産が全て溶けてしまうこともあり得ます。

金利の変動

ここでいう金利とは、その通貨を保有していることで得られるリターンのことです。このリターンに関しては、日本円の場合は小さすぎるために、日本円を主に使用する日本人にとっては理解しがたい概念かもしれません。

通貨に対しての金利の高低については、一般的にはその通貨に対する信用力に左右されると言われます。信用が高ければ高いほど、金利が小さくなるということです。

特にトルコリラ等の途上国等の通貨については、金利が高くなると言われています。日本円のように金利の低い通貨でトルコリラのような金利の高い通貨を購入した場合、スワップポイントという金利差が生じて、そのスワップポイント分の利益を得ることができます。

反対に、トルコリラ/円の売りから入った場合は、スワップポイント分をあなたが支払わなくてはなりません。このような場合、もし突発的な要因でトルコリラの金利が急上昇してしまったら、多額のスワップポイントを支払うリスクを負ってしまいます。

流動性の低下

FXに関しては、他の取り引きと比較して「流動性が非常に高い」といわれています。それもまたFXの魅力の1つでしょう。

この流動性とは、交換したい時に如何に容易に早く交換できるかということです。

流動性が高い場合は、交換したい時すぐに簡単に交換できます。しかし、流動性が低い場合は交換したいのになかなか交換できないということが起こるかもしれません。

FXについても、相場が大きく変動した際などは流動性が極端に低くなってしまい、保有するポジションを解消したくてもそれがなかなかできないようなことが往々にして発生します。

このような場合、ポジションを解消できるようになった時には、相場がマイナスの方向に大きく動いてしまっており、結果として大損するリスクもあります。

スリッページ

スリッページ
FXにおいては、様々な価格が常に変動し、これをレートと呼びます。

このレートについては「注文レート」と「約定レート」との2つがあります。

注文レートとは、FX画面に表示されている価格のことです。画面に赤字か青字で「ASK:1ドル=110円67銭」のように記載されている数字そのものです。

取り引きをする時は、この「1ドル=110円67銭」という数字を見て、「今、米国ドルが安いから買い時だ。10万円分注文しよう」と考えるでしょう。ところが、購入後の履歴を確認すると、「1ドル=116円69銭」で購入したようになっており、「思ったのよりも2銭も高い値段で購入してしまった」となってしまうこともあるかもしれません。この実際に取り引きされた2銭高い116円69銭というのが、約定レートと呼ばれるものです。

この注文レートと約定レートとの差が「スリッページ」です。

スリッページについても、急激な相場の変動等があった場合に大きくなる傾向があります。このような時は、約定レートが注文レートから大きく乖離しているリスクを負うことになってしまいます。

取引所等の機能不全

取引所等は常に数多くの通貨等の売買の取り引きを実施していますが、決して万能ではありません。急激な相場の変動等があった場合は、その保有ポジションを一刻でも早く解消しようと、世界中から多くのトレーダーからの注文が取引所等に殺到します。

その殺到数が想定した量を超えてしまった場合、取引所等でうまく捌けなくなってしまい、最悪閉鎖してしまうなどの機能不全に陥ってしまうことがあります。

このようなことは、我が国の取引所等においても年間数件は生起していますから、決して他人事ではありません。

取引所等が取り引きを再開できるようになった時には、相場が自分が想定したものと異なる方向、すなはちマイナスの方向に大きく動いてしまっていて結果として大損してしまうようなことがあります。

このように取引所等の突如の機能不全等に伴うリスク等も勘定にいれた、堅実的なトレードが求められるようになってきます。

初心者特有のリスク

初心者特有のリスク
ここからは「初心者」という特性にポイントを当てたリスクについて紹介します。

そのリスクとは以下の4つです。

  • ビギナーズラックへの執着心
  • デモトレードでの成功体験の引きずり
  • プロスペクト理論の再現
  • 焦りや野望

先ほど紹介した5つの「一般的なリスク」とも密接に関係してきますので、思い出しながら確認してください。

ビジナーズラックへの執着心

初心者が初めてFXで取り引きを行った場合、成功または勝利する確率が高いようです。その理由についての科学的な説明は現在でもつかず、「ビギナーズラック」とも呼ばれています。

実はこのビギナーズラックは、初心者にとってはリスク以外の何ものでもありません。なぜなら、初心者は最初のうちの連勝を「ビギナーズラック」として認めようとせずに、自分自身の実力だと勘違いしてしまうからです。

最終的には「自分はFXの天才である」との錯覚に酔いしれてしまう可能性もあります。そのような錯覚のもとでは、FXの鉄則よりも自分自身の勝手な根拠のないルールを重宝してしまいがちです。

また、たとえ負けたとしても「自分はFXの天才なんだから、きっと取り戻せる」と大金を注ぎ込んで結果的に取り返しのつかない大損をしてしまうこともあります。

デモトレードでの成功体験の引きずり

実際にトレードする前に、各取引所サイトが無料で提供している「デモトレード」をやられる方も多いでしょう。

FXの傾向等を掴み実践感覚を養うのにデモトレードは最適でしょう。しかし、勘違いして欲しくないのはデモトレードと本トレードでは、取り引きしている心理状況が全く異なるということです。

デモトレードのようにお金を掛けていない時の心理状況と本トレードでお金を掛けている時の心理状況は、全く別物であることを心得ておいてください。そのため、たとえデモトレードで成功していたとしても、本トレードで成功するとは限りません。

デモトレードでの成功体験があるFX初心者は、本トレードにおいて負けるようなことがあったとしても「デモトレードでは連戦連勝だったんだから、自分のトレード方法に間違いはない」と往生にして間違いを認めなくなってしまうような傾向があります。

その結果として、自分の間違いに気づいた頃には、取り返しのつかないような損失を被ってしまっていることもあり得ます。

プロスペクト理論の再現

人間の脳はFXに向いていないと言われています。その理由は、負けたりしてしまうと感情的になり、冷静な判断ができなくなってしまうからです。

そのようなFX等における人間の感情の動向を見事に説明したのが、「プロスペクト理論」と呼ばれるものです。

この理論に基づけば、人間の脳は少しでも利益が発生すると、その後の期待値に関わらずすぐに利益確定をしたいという感情に囚われるとされています。一方で、損が生じた場合は「もしかしたら、もう少し待てば利益に転ずるかもしれない。」となかなか損切りに踏み切れない傾向にあると言われています。

また、1の損失を被った場合は、「次は2の利益を上げて、過去の損失分を取り戻そう」と身の丈に合わない無理なトレードをしてしまうこともこの理論は説明しています。

特に初心者の場合は、その理論が顕著に現れてしまうと言われていますので、注意が必要です。

このプロスペクト理論の再現というリスクを踏まえ、初心者には、後述するように「人間感情を排除」するような対策が求められます。

焦りや野望

FXは、場合によっては人生を一発逆転させてくれるような物凄い効果をもたらしてくれるかもしれません。あなたを一気に億万長者に押し上げてくれる可能性だってあります。

しかし、これらはあくまでも「場合によっては」という条件付きです。本当に運が良く、かつ適切な方法でFXを行った場合に限定されるのは言う間でもありません。

このようなことを踏まえずに、初心者の多くは「FXで億万長者になれる」と、FXに対して過度の期待を寄せがちです。その結果として生じる焦りや野望から、感情的なトレードになってしまい大損を被ってしまうリスクもあります。

FX初心者のリスクへの立ち向かい方3選!

FX初心者のリスクへの立ち向かい方3選!
これまでFXに際してのリスクについて解説をしました。

FXに潜むリスクを踏まえることができたら、あとはこれらのリスクを少しでも低減できるように対策をしていくだけです。

ここでは、FX初心者がリスクへ立ち向かう方法を3つ紹介ほどします。これらの対策をきちんとすることが、今まで述べたきたリスクの低減に直結しますので、実践してみてください。

①無理のない現実的な長期計画

FXに限らず、物事を始めるに当たっては「まずは計画ありき」です。しっかりとした計画を立てることで、現実的なトレードを実践することができるでしょう。

計画を立てる上で、最も大事な要素が「目標と期間」です。いつまでにどれくらいの額を稼ぐというのかを明確に定めておく必要があります。

例えば、「1ヶ月でFXで資産を10倍にする。」というのはあまり非現実的です。

期間については、最低限2〜3年程度、できれば15年ほどの長期で設定するといいでしょう。また、目標については年間2割ほどの利益で構いません。

「年間2割の利益なんて、少なすぎる」と思うかもしれませんが、年間2割の利益でも、これを15年間継続できれば資産は約15倍にもなります。

このように、無理のない現実的な目標であったも、継続することで莫大な利益を得られることを心の中に留めおきましょう。

②人間感情の極力の排除

先ほどのプロスペクト理論でも解説したように、残念ながら感情的になってしまう人間の脳は、本来はFXには不向きとされています。そうなると、我々はFXをしない方がトータル的には利口なのか疑問に思う人も多いでしょう。

しかし、きちんと対応を行っていれば全くと言っていいほど不安に思う必要はありません。人間の感情がFXに悪影響を及ぼすと言うのならば、人間感情を極力排除すべくできるだけ半機械的に行えるようにすることです。

具体的には、「損切り設定」や「利益確定設定」を事前にプリセットしておき、相場がその値になったら半機械的に損切りや利益確定が自動的になされるようにするだけです。それだけでもその場の感情的な行動を排除し、勝率を大きく向上させることが可能になるでしょう。

損切り設定や利益確定設定以外にも、「指値注文」や「逆指値注文」など自動的にできる部分は意外とたくさん存在するので、自分の感情に左右されやすいと思う箇所は、自動的に行えるような対策を施しておくようにするのがおすすめです。

③トレード毎の反省と記録

特にFX初心者は他のトレーダーに比べて明らかに経験値がありませんので、それに対する対応が必要不可欠です。こうした経験値を積むのに最もよい方法が、1回ごとに反省し、そのトレード記録をノートに逐一記載することです。

このようなトレードノートをつけることを習慣化することで、過去の教訓を蓄積し、トレードテクニック等を大きく向上させることができます。

また、失敗したトレード記録を見直すことによって、同じ失敗をする確率を格段に減少させることも可能です。そうした記録がいっぱい詰まっているトレードノートは、側においておくだけでトレードの際の力強い自信となり、あなたの気持ちをポジティブな状態でトレードに向かわせてくれることでしょう。

このノートをつける際は、もちろん手書きでもタイピングでも構いません。しかし、その時の気持ちの一つ一つを鮮明に文字に詰め込むという意味では、「手書き」の方がおすすめです。

まとめ

①FXには、レバレッジ効果などの一般的なリスクが存在
②FX初心者には、ビギナーズラックやデモトレード等での成功体験に伴うリスクも追加的に付随
③無理のない現実的な長期計画、人間感情の極力の排除、反省と記録をし確実に実践することで、これらのリスクとの共存ができ、勝率が向上する