FXを始める際にどの通貨ペアで始めたら良いのか悩む方も多いでしょう。
世界で流通している国際通貨は約180種類もありますが、全ての通貨がFXで取り引きできるわけではありません。そして、国内のFX会社ではおよそ20~30種類の通貨ペアを取り引きできますが、初心者はどの通貨ペアを選んだら良いのでしょう?
そこで、今回はFX初心者におすすめの通貨ペアとそれぞれの通貨の特徴について、詳しく説明していきます。
通貨ペアとは?
通貨ペアとは、異なる国同士の通貨の組み合わせのことです。
FXではそれぞれの国の通貨を英字3文字で表しており「日本円ならJPY」「米ドルならUSD」「ユーロならEUR」「ポンドならGBP」というように表示しています。
それぞれの通貨ペアを表す際には、米ドル/円(USD/JPY)、ユーロ/英ポンド(EUR/GBP)となります。
FXで取り引きする際には2つの国の通貨を売買するので、米ドルだけを買ったり売ったりすることはできません。
そのため、「米ドル/円を買う」「米ドル/円を売る」などといった考え方をします。
各通貨にはそれぞれ特徴があり、通貨ペアによっても特徴が異なります。
FXで取り引きする際にはそれぞれの通貨ペアの特徴を知ることが大切です。
FXでは2つの組み合わさる通貨をそれぞれ「基軸通貨」と「決済通貨」と呼びます。
基軸通貨とは、通貨ペアの左側に表示される通貨を指し、米ドル/円(USD/JPY)であれば米ドル(USD)が基軸通貨です。通貨ペアの中で通貨価値が高い方が基軸通貨として選ばれています。
決済通貨とは、右側に表示される通貨を指し、基軸通貨を売買するための対象の通貨のことを言います。
例えば米ドル/円(USD/JPY)の為替価格が110.00であれば、1ドル(基軸通貨)購入するために必要な日本円(決済通貨)は110.00円になるということです。
このようにFXでは2つの国の通貨の組み合わせを取り引きして、利益を出すことができます。
取り引きする通貨ペアを選ぶ際には、まずそれぞれの国の通貨の特徴を知ることが必要です。
FXでは通貨の種類を「メジャー通貨」と「マイナー通貨」の大きく2つに分けて考えますが、それぞれの国によっても通貨の特徴は異なってきます。
通貨によっては安全性が高い通貨や流動性が低い通貨もあり、特徴は様々です。また、特定の国の通貨でも他国の経済情勢や政治的要因によって影響を受けやすいこともあるので、それぞれの国の通貨の関係性も重要になってきます。
メジャー通貨
FXの中でも取引量が多く流動性が高い国の通貨をメジャー通貨と呼びます。
メジャー通貨には、米ドル(USD)・日本円(JPY)・ユーロ(EUR)・英国ポンド(GBP)・豪ドル(AUD)などが挙げられます。
特徴として、先進国の通貨のため、価格が比較的安定しやすく取引量が多いことから、スプレッドが狭く取り引きしやすい通貨が多いです。
メジャー通貨の中でも、米ドル(USD)・日本円(JPY)・ユーロ(EUR)は取引量が最も多いことから、世界三大通貨と呼ばれています。
米ドル(USD)は取引量が最も多い世界の基軸通貨で、2021年の国内総生産量(GDP)が約22兆ドルもあります。FX市場だけでなく世界の経済はアメリカ市場を中心に動いています。
米ドルは取引量が多く流動性が高いため基本的にはボラティリティ(価格変動)はあまり大きくありません。
しかし、米ドルは「有事のドル買い」とも言われ、世界的な戦争や経済危機などの有事が起こると、安全資金として買われやすい傾向がありました。
私達にも馴染みの深い日本円(JPY)は安全資産として人気があり、世界で3番目に取引量が多い通貨です。
日本円が安全資産として人気がある理由は、金融システムが安定している点や低いインフレ率です。
FX市場に懸念事項や不安材料があるときは安全資産として日本円は買われやすいですが、市場が安定しているときには日本円は低金利のため売られやすい傾向にあります。
日本円は日銀の金融政策の影響を最も受けやすいと言われています。
EU(欧州連合)のユーロ(EUR)は米ドルに次いで世界で2番目に取引量の多い通貨です。
EUはイタリア・ドイツ・ギリシャなど27の加盟国で結成されており、様々な国の経済指標や要人発言などで為替価格が変動しやすいという点が特徴です。特に、EUの中心国であるドイツやフランスの経済指標などに注目が集まっています。
ユーロは複数の国の影響を受けやすいため、米ドルや円に比べるとボラティリティは高い傾向にあります。
イギリス(英国)のポンド(GBP)は世界で4番目に取引量が多い通貨で、ボラティリティが大きいことから人気のある通貨の一つです。
また、トレンドが発生すると継続しやすいという特徴もあり、ハイリスクハイリターンな通貨として中上級者やスキャルピングトレーダーが好んで取り引きします。
ポンドはボラティリティが高く短時間の取り引きでも利益幅は大きいですが、その分リスクも大きくなりメジャー通貨の中でも初心者には取り扱いが難しい通貨の一つです。
オーストラリアの豪ドル(AUD)はメジャー通貨の中でも高金利通貨として人気です。
資源大国であるオーストラリアは、資源価格や貿易国である中国の経済指標に影響を受けやすいという特徴があります。
また、オーストラリアの輸出品目は約6割が鉱物資源ということで、鉱物資源の価格が豪ドルの為替価格に与える影響は大きいと言えます。
オーストラリア国内の経済指標も為替価格に与える影響は大きく、オーストラリア準備銀行が発表する政策金利などにも注意が必要です。
マイナー通貨
メジャー通貨に比べて取引量が少なく、流動性が低い国の通貨をマイナー通貨と言います。
マイナー通貨には、トルコリラ(TRY)・南アフリカランド(ZAR)・メキシコペソ(MXN)などが挙げられ、流動性が低いことから高金利の通貨が多い傾向にあります。
特徴としては取引量が少なくボラティリティが高いため、初心者には取り扱いが難しい通貨が多いという点です。
しかし、マイナー通貨にはスワップポイントが高い通貨も多いため、中長期的にスワップポイント目的で保有するトレーダーもいます。
南アフリカランド(ZAR)は資源価格の影響を受けやすい資源国で高金利の通貨として有名です。
南アフリカは金・ダイヤモンド・プラチナなどの鉱物資源が豊富で、金などの商品価格に影響を受けやすいという特徴があります。
また、南アフリカランドは世界経済の影響を受けやすいほか、政治リスクや地政学リスクが高いと言えます。政治家の汚職問題や高い失業率、インフレなど国内の問題が多いため為替リスクも高いです。
トルコリラ(TRY)はマイナー通貨の中でも高金利通貨の代表格で、政策金利は18.00%(2021年9月時点)もあります。日本の政策金利は-0.10%(2021年9月時点)ですので、その差は歴然です。
トルコリラは高金利通貨であるため、スワップポイントが高いことや必要最低証拠金がメジャー通貨に比べ低いことから投資家にも人気のある通貨の一つです。
トルコは国内総生産量(GDP)が増加しており、若い人材が多いことから労働人口増加が見込める国でもあります。
メキシコは国内総生産量(GDP)が世界15位(2020年)とマイナー通貨の中でも経済規模が大きい国です。
石油・天然ガス・銀などの鉱物資源が豊富で、資源国通貨に位置づけられ原油などの資源価格にも影響を受けやすいのがメキシコペソです。
また、メキシコはアメリカと隣接していることから、アメリカ経済の影響を受けやすいという特徴があります。アメリカとの関係が良好であれば為替価格は安定していますが、関係が悪化した場合には為替価格が変動する恐れがあるので注意が必要です。
ストレート通貨
米ドルと直接取り引きされる通貨ペアが、ストレート通貨です。
FX市場では全ての通貨を基軸通貨である米ドルを一度通すため、米ドルと直接取り引きされる通貨ペアをストレート通貨またはドルストレートと呼びます。
「米ドル/円(USD/JPY)」や「ユーロ/米ドル(EUR/USD)」などが例として挙げられます。
アメリカが世界経済の中心にあることからストレート通貨は取引量やボラティリティが安定しやすいと言われ、初心者でも取り引きがしやすいのが特徴です。
クロス通貨
反対に米ドルを介さない通貨ペアをクロス通貨と呼びます。
私達が日本円で取り引きする場合でもインターバンク市場においては、一度日本円で米ドルが買われ、その米ドルで対象の通貨ペアが買われます。このように一度他の取り引きが介入するため米ドルを通さない通貨ペアがクロス通貨です。
クロス通貨には「ユーロ/円(EUR/JPY)」「ポンド/豪ドル(GBP/AUD)」などが挙げられます。
国によっては取引量が少なくボラティリティが激しいため、クロス通貨の取り引きは難しいという特徴があります。
FXで利益を得る方法
FXで取り引きできる通貨やその特徴について説明しましたが、FXではそれぞれの通貨の特徴を活かした取り引きによって利益を得られます。それは、売買益によって利益を得る方法です。
また、取引量が多くボラティリティが高い通貨ペアであれば、短期間のトレードで利益を狙うことができ、低金利の通貨と高金利の通貨ペアであれば「スワップポイント」と呼ばれる方法で利益を得ることもできます。
FXや株式などの投資で最もオーソドックスな方法が売買時の差額において利益を出す方法です。
特定の通貨ペアを安く買い高く売ることでその差額が利益になりますし、反対に高く売って安く買うことでも利益を得ることができます。
FXが株式投資などと大きく異なる点は「高く売って安く買う」ことで利益を出せるということです。そのため、FXでは特定の通貨ペアが上がるか下がるかを予想して取り引きを行います。
例えば、米ドル/円(USD/JPY)が今後上がると予想した場合、1ドル=100円で購入し、1ドル=110円になったときに売却すれば10円の利益になるということです。
反対に米ドル/円(USD/JPY)が今後下がると予想した場合、1ドル=100円で売却し、1ドル=90円になったときに買い戻した場合でも10円の利益になります。
FXでは2つの国の通貨の金利差によって利益を得る方法もあります。
低金利の国の通貨を売り、高金利の国の通貨を買うとスワップポイントと呼ばれる金利差で収益が発生する仕組みです。
スワップポイントは「金利差調整分」とも呼ばれ、低金利の国の通貨を買い、高金利の国の通貨を売るとポジションを保有しているだけで損失が発生する場合もあります。
例えば、高金利であるトルコリラと低金利である日本円の場合、トルコリラ/円で買いポジションを保有していると1日毎にスワップポイントが発生するということです。
トルコリラ/円の買いポジションとは、金利の高いトルコリラを日本円で買っているイメージだと分かりやすいでしょう。
スワップポイントはポジションを保有しているだけで利益を得られますが、反対に損失が増えていく場合もあります。また、高金利の通貨には為替価格の変動リスクもあるため注意が必要です。
初心者におすすめの通貨ペアの選び方
各通貨の特徴や金利によって利益を得る方法は分かりました。では、初心者の方はどのように通貨ペアを選んで取り引きを始めたら良いのでしょう?
それぞれの通貨に特徴があるように通貨ペアにも特徴があります。通貨の組み合わせによって通貨ペアの特徴は大きく異なってきますので、初心者が通貨ペアを選ぶポイントをまとめました。
初心者が通貨ペアを選ぶポイントとして、まず一定の取引量がある通貨ペアであることが大事です。
通貨ペアの取引量が少ないと保有しているポジションの決済ができなかったり、新たにポジションを注文できないというリスクがあります。
またマイナー通貨なども取引量が少ないため、有事の際に価格が大きく変動して損失が拡大するなどが想定されます。
取引量が少ないと価格が安定しないため、FX初心者は取引量が多く価格が安定しやすい通貨ペアを選ぶのが安心です。
次に適度なボラティリティがある通貨ペアであるということです。
ボラティリティとは、価格変動率のことで、ある程度通貨ペアの値動きがあることが望ましいです。
通貨ペアの中にはトレンドが発生して価格が変動しやすい通貨ペアや価格が変動しにくい通貨ペアなどがあります。
初心者が通貨ペアを選ぶポイントとしては、ボラティリティは高すぎても低すぎてもいけません。高すぎると一度の損益幅が大きくなりすぎてしまい、低すぎても売買益で利益を出すことが難しくなってしまいます。
適度なボラティリティがある通貨ペアを選ぶことによって、FX初心者はトレードを始めやすいと言えるでしょう。
通貨ペアを選ぶ際に通貨ペアの特徴だけでなく取引コストについても考える必要があります。
FX会社や通貨ペアによってスプレッドは異なるため、スプレッドの幅が広い通貨ペアだとそれだけ取引コストが多く発生します。
トレードスタイルによって、取引コストの負担は変わってきますが、いずれにせよ初心者のうちはスプレッドが狭い通貨ペアを選んだ方が良いでしょう。
おすすめの通貨ペア
初心者におすすめの通貨ペアの選び方を説明しましたが、FXの通貨ペアは種類も多く実際にどの通貨ペアを選んだら良いのか分からない方も多いでしょう。
そこで、初心者におすすめの通貨ペアを2つ紹介します。
これから紹介する通貨ペアは、私達の生活に馴染みのある通貨ペアやトレードリスクが比較的低い通貨ペアですので、初心者の方でも始めやすいとされています。
初心者に最もおすすめな通貨ペアは米ドル/円(USD/JPY)です。
理由としては、アメリカや日本のニュースは比較的簡単に入手することができ、為替価格の動向を予想しやすい点が挙げられます。
また、米ドル/円はスプレッドが狭く取引量も多いことから為替価格が安定しやすく初心者にもおすすめです。
日本時間の夕方から夜にかけて米ドル/円ボラティリティが高くなるので、会社員や主婦の方でも比較的取り引きしやすい時間が多くなっています。
次におすすめの通貨ペアはユーロ/米ドル(EUR/USD)です。
ユーロ/米ドルも世界的に取引量が多い通貨ペアであり、日本時間の夕方から夜にかけてボラティリティが高くなる傾向があります。
また、ユーロ/米ドルは一度トレンドが発生すると持続しやすいという特徴があるので、FXにまだ慣れていない初心者にとっては比較的予想がしやすい通貨ペアです。
米ドル/円に比べ、ややボラティリティが高いので短期的にトレードしたい方に向いていると言えます。